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欧米では中古住宅が主流?
日本と欧米の住宅事情の違い

目次

    ※2024年12月23日現在の法律に準じた内容です。

    日本では新築住宅が人気ですが、欧米諸国では中古住宅が主流となっています。

    そこで今回は、日本と欧米の住宅事情の違いを解説します。アメリカの住宅の種類や特徴も紹介しますので、欧米の中古住宅に興味のある方は、ぜひ参考にしてください。

    日本と欧米の中古住宅事情の違い

    まずは、日本と欧米の中古住宅事情の違いを解説します。

    日本と欧米諸国の中古住宅の流通量

    日本の中古住宅は欧米よりも流通量が少なく、国土交通省の『平成30年住宅・土地統計調査の集計結果(住宅及び世帯に関する基本集計)の概要』によると、平成30年の中古住宅流通量は全体の14.5%となっています。

    一方で、国土交通省の「令和5年度 住宅経済統計データ『住宅の利活用期間と既存住宅の流通』」によると、令和4年の欧米諸国の中古住宅流通量は、以下のとおりです。

    【欧米諸国(令和4年)】

    • フランス:75.1%
    • アメリカ:76.4%
    • イギリス:86.9%

    このように日本と欧米諸国の中古住宅流通量に大きな差があるのは、主に日本と欧米では住宅に対する考え方が大きく異なっているためです。日本では築年数の古い住宅は資産価値が低いと考えられていますが、欧米では逆に長持ちしている古い住宅のほうが資産価値が高いと考えられ、数多く取引されています。

    日本では新築が人気な理由

    建てやすさと解体しやすさに優れた木造住宅が主流で、地震が多い日本では、住宅を「必要に応じて建て直すもの」(スクラップ&ビルド)と考える文化が根強く残っており、これが新築物件に人気が集まる理由の一つと考えられます。国土交通省の「我が国の住宅ストックをめぐる状況について(補足資料)」によると、滅失住宅の平均築後年数、すなわち解体された建物の築後数の平均は、平成20年から平成25年の間のデータで32.1年となっており、短いサイクルで壊しては建て直されてきたことがわかります。

    一方の欧米諸国では、住宅を「永続的に残るもの」(ストック)と認識し、古くなれば改良を加える文化が定着しています。滅失住宅の平均築後年数は、アメリカは66.6年、イギリスは80.6年と、日本よりも住宅の活用期間が長く、特にイギリスでは築年数の古い住宅が高く評価されやすい傾向があるようです。

    戦後の欧米化が日本の住宅を大きく変えた?

    また、戦後の日本では、人口増加と経済成長による住宅不足で「質より量」を重視した住宅が数多く建築され、高品質とはいえない住宅が多く存在していました。そして、急速な欧米化によって住宅需要が大きく変化したことによって、昔ながらの間取りや設備の住宅を「現代の生活に合わない」と認識する人が増え、中古住宅への抵抗感につながっています。

    欧米の住宅事情の特徴

    ここでは、アメリカの住宅事情の特徴を説明します。

    家を頻繁に買い替える

    日本で家を何度も購入する人は少ないですが、アメリカではライフステージに合わせて家を買い替えるのが一般的です。

    独身時代や結婚後、さらには子育て中やリタイア後など、人生で数回家を買い替える場合も多く、日本よりも中古住宅の需要が高いことから、家を住み替えても悠々自適に暮らせるケースも珍しくありません。

    中古住宅の値段が上がる!?

    アメリカの中古住宅の値段は、基本的に大きく下がることはなく、中古住宅の値段が年々上昇するケースもあります。

    そのため、アメリカでは価格上昇を見込んで売却益(キャピタルゲイン)を得る投資目的で中古住宅を購入する場合も多く、一軒家の場合は5~7年の長期対象投資物件として、マンションやコンドミニアムは3~5年の短期対象投資物件として扱うケースもあります。

    外観よりもエリアを重視する?

    アメリカは、州ごとに建築規制がかけられているほか、エリアやコミュニティによって外観が統一されているところも珍しくありません。そのため、アメリカでは外観よりも居住するエリアを重視する人が多く、日本のように自分で家を建てる人は少ないようです。

    また、アメリカではエリアやコミュニティによって格差が生じており、社会的なステータスを居住地で示す人も多いようです。

    安く買ってリノベーションをする人が多い

    アメリカでは、中古住宅を安く購入して自分好みにリノベーションするのが一般的です。日本でも近年ようやく中古住宅をリノベーションする人が増えてきましたが、アメリカでは昔から中古物件を使い古しと捉えず、再販売された住宅として認識する傾向があります。

    特に、人気エリアのシアトルでは築年数が約100年の住宅が売買されるケースもあり、中古住宅だからといって質が悪いとは考えられていません。

    まず不動産エージェントを選ぶ

    アメリカでは、不動産エージェントを探してから物件を紹介してもらうケースがほとんどです。アメリカの不動産エージェントには、クライアントの代理人として適切な物件を紹介する役割があり、相性のよいエージェントと契約を結ぶことで、希望に合った中古住宅と出会いやすくなります。

    日本では物件を選んでから不動産業者とやり取りするケースが多いですが、近年は不動産エージェントに中古住宅の紹介を依頼することで、物件探しや契約をより希望に沿った形で進めることも可能になってきています。

    契約の前に買主が調査を行う

    アメリカで中古住宅を購入する際、買主は申し込み後に物件の状態を調べたうえで、契約をする必要があります。これは、次に紹介するように売主に担保責任がないからです。

    なお、物件の状態で調査すべき項目は、以下のとおりです。

    • 建物の欠陥
    • 建物の評価額
    • 周辺地域の情報

    また、アメリカで物件の購入申し込みをする際は契約する条件を細かく提示でき、条件に合わなければキャンセルも可能です。

    売主に担保責任がない

    日本では住宅の引き渡し後に建物の欠陥が見つかると、売主に契約不適合責任が生じますが、アメリカであれば売主の担保責任はありません。アメリカでの物件購入後に建物の欠陥が見つかった場合は、基本的に買主が責任を負わなければならないので、契約前にインスペクション(住宅診断)を行うことが必要です。

    インスペクションで欠陥や不具合が見つかれば、売主と修繕に関する交渉ができ、合意できない場合は違約金なしでのキャンセルも可能です。ただし、住宅を購入した後で、開示書類に記載されていない部分に欠陥や不具合が発覚する可能性もある点にご注意ください。

    アメリカの住宅の種類

    ここからは、アメリカの住宅の種類を紹介します。

    集合住宅

    <アパート>

    アメリカのアパートとは、賃貸の集合住宅のことを指します。リビングルームやベッドルーム、キッチン、バスルームが設置されているのが一般的で、ジムやパーティールームなどの共用施設が充実していることも多いです。

    また、管理会社が経営するアパートに空きがある場合は、レンタルオフィスとして貸し出すケースもあります。部屋以外の共用スペースは掃除や手入れが不要で、修理対応が比較的早く、管理費が発生しない点もメリットです。

    <コンドミニアム>

    コンドミニアムは、高層ビルから低層ビルまで、価格や広さの種類が豊富で、中高層のコンドミニアムは日本の分譲マンションのような集合住宅です。アパートと同様に、ジムやパーティールームなどの共用施設が充実しています。セキュリティにも優れており、資産価値が下がりにくく賃貸しやすい点も特徴です。

    ただし、共益費や管理費はオーナー(購入者)が支払わなければならず、第三者に貸し出す場合は賃料収入から差し引かれる点にも注意が必要です。

    <コープ>

    コープとは、ビルの株式を保有するオーナーと管理組合が共同で運営する所有形態のことです。マンハッタンの中古住宅に多く、共同運営のため入居を希望する場合は面接や書類審査(職歴・資産残高など)を受けなければなりません。審査基準として経済面や品格面を重視するケースも多く、審査に落ちても理由を開示してもらえない場合もあります。

    また、コープにはルールが厳しく設定されており、セカンドハウスとしての使用や親子間の譲渡を禁止している点にも注意が必要です。

    <タウンハウス>

    タウンハウスとは、複数の部屋が長屋形式で横につながっている集合住宅のことを指します。コンドミニアムと構造が似ていますが、タウンハウスは2~3階建てが主流で、各部屋に玄関が設置されている点が特徴です。

    また、タウンハウスは上下の階を占有するので、騒音に悩む心配が少なく、ほかの集合住宅よりも独立した住み心地も魅力の一つとなっています。コンドミニアムと同様にオーナーが管理費を支払う必要はありますが、共用部分を管理会社が管理しているので、掃除や手入れの必要がない点もメリットといえるでしょう。

    戸建て

    <ホーム>

    ホームとは日本で言う戸建て住宅のことで、一世帯用と複数世帯用に分けられます。一世帯用のホームは、ほかの住宅よりも物音を気にする心配が少なく、専用庭やテラスを所有できる点がメリットです。一方の複数世帯用のホームは、上下式のものとデュプレックス(左右式)に分けられ、各居住スペースに玄関やキッチン、浴室が設置されています。また、個人オーナーから賃貸するケースでは、借主が庭の手入れや雪かきなどを行うのが一般的です。

    アメリカの住宅の特徴

    ここで、アメリカの住宅の特徴を解説します。

    土足

    日本では玄関で靴を脱いで部屋に上がるのが一般的ですが、アメリカの住宅では土足で過ごす文化があるため、一般的に玄関には靴を脱ぐスペースが設けられていません。

    しかし、最近では玄関やガレージで自宅用の靴に履き替える家庭も増えており、外出する際は靴箱付きのベンチなどで土足に履き替えるケースもあるようです。土足で生活するのに抵抗がある場合は、入居前の清掃を依頼できるか確認しておくとよいでしょう。

    浴室

    アメリカの浴室は、ユニットバスがほとんどです。住宅内に浴室が複数ある場合は、トイレと洗面台が一緒に設置されているケースもありますが、トイレとシャワーが独立している住宅はなかなか見られません。

    シャワーヘッドが固定されている浴室も多く、シャワーのハンドルを回してもお湯の量を調節できないので、日本の浴室に慣れている場合は不便を感じる可能性もあるでしょう。また、アメリカでは湯船につかる習慣がなく、浴槽が浅めに設計されている点にも注意が必要です。

    洗濯機・乾燥機

    アメリカでは、洗濯物の外干しを「景観を損ない、資産価値を下げる行為」と見なす文化が定着しており、洗濯機や乾燥機が設置されている住宅が一般的です。これは、1960年ごろに洗濯乾燥機が広く普及し、洗濯物の外干しに低所得者のイメージを持つ人が増えたことが原因です。管理組合や地主の多くが、事故や犯罪を誘発する危険性を理由に、洗濯物の外干しを禁止しているようです。

    しかし、近年では環境問題の観点から「洗濯物を自由に干す権利」を主張する声もあり、アメリカで屋外に洗濯物を干せるようになるかどうか今後の動向に注目する必要があるといえるでしょう。

    また、アメリカの中古住宅の中には洗濯機や乾燥機を共同で使用する物件もありますが、部屋とランドリースペースの往復に不便を感じる場合は、ほかの物件も視野に入れて検討することをおすすめします。

    庭の設備

    アメリカでは、庭の設備が充実している住宅が多いです。中にはバーベキューやプールが楽しめる物件もあり、マンションの場合は管理会社が手入れをしてくれるので安心です。

    ただし、プール付きの一軒家を購入する場合は手入れにコストがかかりますし、庭に芝生がある場合は芝刈りを定期的に行って、資産価値を下げないようにする必要もあります。

    キッチン

    日本ではコンパクトなキッチンを設置した住宅をよく見かけますが、アメリカではオーブンや食洗機、ディスポーザーなどの充実した設備を備えた、開放的で広いキッチンが一般的です。単身用のアパートでもキッチンが広く設計されている場合が多く、冷蔵庫からガスコンロまでの距離が4m離れているケースもあります。

    また、コンロや作業台が日本よりも高く設計されているので、日本のキッチンとの差に使いづらさを感じる人も多いかもしれません。

    まとめ

    欧米では、住宅の寿命が長く、新築住宅よりも中古住宅に人気が集まりやすい傾向があります。土足の文化や住宅の設備など、日本のライフスタイルとの違いに戸惑いを感じる方も多いかもしれませんが、中古住宅の値段が年々上昇するケースもあり、投資目的での購入も可能な点がメリットです。

    この記事を書いた人

    スムストック編集部
    スムストック編集部
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