※2025年10月14日現在の法律に準じた内容です。
長年住み慣れた愛着のある家や相続した実家を売るとき、「古すぎて買い手がつかないのでは」と不安に思う方は少なくありません。しかし、実は古い家にも需要があり、立地や建物の状態次第では十分に売却できる可能性があります。
この記事では、古い家を売るための代表的な5つの方法や、失敗しないための注意点などについて解説します。
「古すぎて売れないのでは」と不安に思う方もいますが、実は需要があります。ここでは、古い家の市場状況など、売却前に知っておきたいポイントを解説します。
古い家の目安となる一般的な基準は、築年数が法定耐用年数を超えているかどうかです。
国税庁が定める木造住宅の税務上の法定耐用年数は22年であるため、築20年を超えると市場価値はほとんどありません。(下図参照)
そのため、一般的に築20年を超えている家は「古い家」とされています。ただし、築年数だけで家の価値が決まるわけではありません。耐震性能・リフォーム履歴・メンテナンス状況などによって、古い家でも高値で売れることがあります。
なお、土地の価格は相場によって変動しますが、建物の築年数には左右されません。そのため、建物の価値が下がっても、立地条件が良ければ十分に売却のチャンスがあります。
中古戸建て住宅の価格査定の例

出典:中古住宅流通、リフォーム 市場の現状|国土交通省
P11を加工して作成
東日本不動産流通機構(通称:東日本レインズ)の資料によれば、首都圏における2024年の中古戸建住宅流通市場の動向は以下のとおりです。
成約件数と新規登録件数は全地域において増加しており、このデータから首都圏の中古戸建市場が全体的に活発化していることが読み取れます。
出典:首都圏不動産流通市場の動向(2024年)|公益財団法人東日本不動産流通機構
また、住宅金融支援機構のフラット35利用者調査によれば、中古戸建て住宅を選ぶ人の割合は2019年度には10%未満でしたが2024年度には20.5%に上昇しました。
出典:2024年度 フラット35利用者調査|住宅金融支援機構
このように、中古戸建てを選択する買主の層が拡大しています。古い家は価格が手頃なため、リフォームや建て替えを前提に探している買主層にニーズがあり、特に立地が良い住宅であれば売却しやすい傾向にあります。
古い家を売りたいと考える方は、「本当に売れるのか」という不安を抱きがちです。
築年数が古いと敬遠される印象がありますが、実際にはリフォーム前提や土地利用を目的とした買主が購入を希望するケースも多くあります。
ただし、売却前に解体やリフォームをすべきかどうかの判断は難しく、費用対効果を見極めることが重要です。
また、古い家は雨漏り・シロアリ被害・耐震性不足といったリスクもあり、売却後に契約不適合責任を問われる可能性があります。契約不適合責任とは、売買契約時に伝えていなかった欠陥などがあった場合に売主が負う責任のことです。
これらのトラブルを避けるポイントは後述します。

古い家でも売却方法を工夫すれば、十分に価値を見いだせます。
ここでは、古い家を売る代表的な5つの方法について解説しましょう。
古い家を売る代表的な方法の一つに、そのまま売るという選択肢があります。修繕やリフォームを行わずに現状のままで売却できるため、解体費用やリフォーム費用がかからないのが最大のメリットです。
この方法は、古い家の売却において最も手軽で一般的な手法とされ、多くの売主がまず検討します。ただし、修繕などを行わないため、売却価格は相場より低くなりやすいのが注意点です。
買主は主にリフォーム前提や土地目的の購入者となります。とはいえ、費用をかけずに売却できる方法なので、手間やコストを抑えたい方には有効な方法です。
古い家を売るには、既存住宅売買瑕疵保険(いわゆる瑕疵担保保険)を付けて売るという方法もあります。この保険を付ける最大のメリットは、売却後に雨漏りやシロアリ被害、構造上の欠陥などが見つかった場合でも、補修費用が保険でカバーされるため、売主の負担が抑えられることです。
ただし、この保険に加入するには住宅の基本的な性能について、専門の建築士による検査に合格することが必要です。既存住宅売買瑕疵保険によって買主の心配を大きく減らせるため、早期の成約につながることがあります。
出典:既存住宅売買瑕疵保険について|国土交通省
更地にして売るのも古い家を売る場合の選択肢の一つです。
老朽化が進んで管理が難しい家はリフォームして再利用するよりも、いっそ解体して土地だけを売却したほうが、買主にとってメリットが大きい場合があります。
土地が更地であれば買主は新築を建てたり、駐車場などで土地活用をしたりと用途を自由に決められるため、検討から契約までの流れがスムーズになり、結果的に売却スピードが上がる可能性があります。
特に立地条件が良い土地であれば、古い家が付いている状態よりも更地にしたほうが、高値で売れるケースも少なくありません。
ただし、当然ながら解体費用が発生するため、その費用と売却価格のバランスをしっかり見極めた上で判断することが大切です。
古い家を売る際は、リフォームしてから売却する方法も有力な選択肢の一つです。
築年数が経過した住宅は見た目や設備の老朽化が進んでいるため、買主から敬遠されやすい傾向がありますが、水回りの交換や内装の刷新など必要な部分をリフォームすることで印象が良くなり、購入希望者の層が広がります。
特に、キッチンや浴室など日常生活の快適さに直結する場所をキレイにすると、入居後の手間や追加の修繕費用が不要になるため、早期成約につながりやすくなるでしょう。
相場より高めの売却価格も期待できるようになります。費用対効果を見極め、過剰なリフォームは避けつつ、市場ニーズに合った改善を行うことがポイントです。
古い家の売却方法には、現状のまま不動産会社へ買い取ってもらう「買取」もあります。仲介で買主を探すのと違って不動産会社が直接買い取るため、短期間で売却でき、早期の現金化も狙えます。買取は、不動産会社が買主となって売主と直接売買契約を結ぶため、仲介手数料はかかりません。
雨漏りや老朽化があっても現状渡しで売却でき、リフォームや解体の費用の負担を避けられるのも良い点です。
ただ、再販売を前提に買い取るため、買取価格の目安は仲介による売却の7~8割が相場です。仲介での売却より価格が低くなる点に注意しましょう。

どの売り方にするか決まったら、次は売却までの流れを確認しましょう。失敗しないための注意点もあわせてご紹介します。
古い家を売る流れは以下のとおりです。
まず複数の不動産会社に査定を依頼し、相場や売却方法(仲介・買取・リフォーム後に販売など)を比較検討します。仲介を選ぶ場合は媒介契約を締結し、販売活動や内見を経て買主と売買契約を結びます。買取なら価格に納得できればすぐに契約が可能です。
売買契約の際は必要書類を準備し、決済と同時に所有権移転登記を行います。選んだ売却方法に応じて期間や手続きが変わるため、事前に流れを把握しておくことが重要です。
古い家を売却する際は、売却後のトラブルを避けるために次のような点に注意が必要です。
先述したように売主には契約不適合責任があるため、売却後に欠陥などが見つかった場合は補修などを求められ、告知していなかった場合には損害賠償を求められるケースがあります。特に雨漏り・シロアリ被害・耐震性不足などの欠陥はトラブルになりやすいので、把握している欠陥については必ず買主へ契約前に告知しておきましょう。家の状態を把握するには、インスペクション(建物状況調査)を利用するのもよいでしょう。
また、古い家では土地の境界が不明確な場合があり、隣地との境界が不明確なまま売却すると、後でトラブルに発展することがあります。そのため、隣地所有者との境界の確認を事前に済ませておきましょう。
なお、令和6年4月1日から相続登記が義務化され、相続した住宅や不動産の場合、原則として不動産の取得を知った日から3年以内に登記が必要になります。義務化が始まる前に相続した不動産は、令和9年3月31日までに手続きを完了しなければなりません。相続した実家などで相続登記をしていない場合は、早めに登記を済ませておきましょう。
これらを整えてから売却を進めることで、スムーズかつ安全な取引が可能になります。
古い家を高く、スムーズに売るには、複数の不動産会社を比較するようにしましょう。一括査定サイトなどを利用して複数の会社に査定依頼を行い、売却価格だけでなく販売実績や営業担当者の提案力・熱意を比べるのがポイントです。
古い家の売却に強みを持つ会社を選ぶと、家の魅力や活用方法を購入希望者へ的確に伝えられるので、高めに売れる可能性が広がります。
不動産会社と相談しながら簡易的な清掃やリフォームを行い、物件のイメージアップを図ってから売り出すのも有効です。1社のみに任せず複数社を検討し、納得できるサポートを提供してくれる不動産会社を見つけてから売却を進めましょう。
ハウスメーカー施工の住宅なら、「スムストック」の対象となるかどうかを確認することをおすすめします。
スムストックとは、大手ハウスメーカー10社が設立した「優良ストック住宅推進協議会」が定める基準を満たした優良な住宅です。土地と建物を分け、独自の基準でメンテナンス履歴を加味した建物査定を行い、適正に評価されます。
スムストックの場合、築年数が20年を超えていても建物の価値が適正に評価されるため、売却価格も高く評価される可能性があり、より良い条件での売却が期待できます。
また、買主側が特に不安に思う「家に不具合はないか」「この価格は適正なのか」といった点においても、適正な評価がされた優良な住宅であるというこの証明は、大きな安心材料となります。
スムストックに認定されているということは、売主と買主双方にとって大きなメリットであり、納得できる取引の成立につながるのです。

古い家を保有していると、固定資産税や維持費を負担しなければならず、老朽化や空き巣などのリスクもあります。古い家であっても、売却方法によっては高く・早く売却できる可能性もあります。
そのためには、立地や家の状態に合った売却方法を選ぶことが重要です。また、古い家を売却する際には、契約不適合責任といった注意点もあります。
こうした売却方法の選択などにはノウハウが必要なため、古い家の販売実績が豊富な不動産会社を選び、安心かつ満足のいく価格での売却を目指しましょう。