※2026年5月21日現在の法律に準じた内容です。
既存(中古)住宅の売却では、築年数や立地だけでなく、「どのように建てられ、どのように維持されてきたか」が以前より重視されるようになっています。その点で、長期優良住宅は、耐震性や省エネルギー性など一定の認定基準を満たし、維持管理が記録されているため、売却時も大きな強みとなります。
本記事では、長期優良住宅が売却時に評価される理由と、その価値をきちんと伝えるために押さえておきたいポイントを、制度の注意点も含めて整理します。
長期優良住宅とは、長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた優良な住宅です。「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」に基づき、長期優良住宅の建築および維持保全に関する計画を作成し、着工前に所管行政庁に申請することで認定を受ける仕組みとなっています。
これまで日本では、一定年数が経過すると住宅を建て替える「スクラップ・アンド・ビルド型」の考え方が一般的でした。しかし現在は、良質な住宅を適切に維持管理し、長期にわたって活用する「ストック型」の考え方が重視されるようになってきました。
長期優良住宅はその流れを具体化した制度で、住宅の長寿命化により環境負荷を減らし、持続可能な社会の実現にもつながる施策となっているのです。
長期優良住宅の認定を受けるには、建築前に建築および維持保全に関する計画を作成し、所管行政庁の審査を受ける必要があります。耐震性や劣化対策、維持管理のしやすさ、居住環境への配慮などが基準に適合しているかを確認され、認定を受けた住宅については、完成後も認定内容に沿った維持保全が求められます。
重要なのは、認定が建築時点で終わらない点です。所有者は、あらかじめ定めた維持保全計画に基づいて、定期的な点検や必要な補修を継続することが義務づけられています。売却時には、継続的な管理の履歴が、建物の状態を説明するための客観的な資料になります。
既存(中古)住宅では「見えない部分」をどう説明するかが重要になるため、長期優良住宅の仕組み自体が売却時の安心材料となっています。
戸建て住宅の長期優良住宅は、8つの項目で認定基準が定められています。
なお、共同住宅の場合は、躯体天井高さと共用部分のバリアフリー化も含めた10項目が対象となります。
劣化対策は、住宅の構造躯体を長く使い続けるための基本です。床下や小屋裏の点検がしやすい構造、防腐・防蟻への配慮などにより、湿気やシロアリによる劣化リスクを抑えやすくなります。
長期優良住宅では、一定以上の耐震性能が求められます。地震への備えは、住宅の安心感に直結する要素であり、購入検討者が内見だけでは判断しにくい部分でもあります。
給排水管など、将来的に更新が必要になる設備について、点検や補修をしやすい設計になっている点も長期優良住宅の特徴です。既存(中古)住宅では、「買った後に思わぬ修繕費がかかるのではないか」という不安がつきものですが、維持管理のしやすさは、その不安を和らげる材料になります。
長期優良住宅では、外皮(屋根、壁、床、窓など)の断熱性能を高め、冷暖房時の熱損失を抑える断熱等性能等級5以上と、一次エネルギー消費量等級6以上が求められます。
長期優良住宅では、建物単体の性能だけでなく、地域の景観や居住環境への配慮も求められます。周辺環境との調和が図られている住宅は、将来的な住みやすさや資産価値の維持が期待できます。
長期優良住宅では、「長く住み継ぐ住宅として最低限必要な広さ」を満たす前提があるため、一定以上の住戸面積が求められます。戸建て住宅では、原則として75平方メートル以上、少なくとも一つの階の床面積が40平方メートル以上であることが必須要件です。
長期優良住宅では、少なくとも30年以上を見据えた維持保全計画を作成し、点検や補修の考え方を定めます。この計画があることで、売却時には「これまでどう管理され、これからどう維持していくか」を買主と共有しやすくなります。
長期優良住宅の認定制度では、土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)や災害危険区域、各自治体が「一律に居住を避けるべき」と指定する浸水想定区域など、自然災害リスクが高い特定の地域に建築される住宅は、原則として認定の対象外となります。

長期優良住宅は、認定基準に適合した住宅性能と管理履歴を説明しやすく、買主の不安を解消しやすいことが強みです。また、住宅ローンの減税措置など税制面のメリットも訴求しやすい点となります。
既存(中古)住宅の購入では、内装の状態よりも、見えない構造部分や断熱性能、配管まわりの状態を不安に思う方が少なくありません。長期優良住宅であれば、認定基準を前提に説明できるため、買主は住宅の品質をイメージしやすくなります。
認定があることで、買主は品質の高い住宅であることが理解でき、購入判断のハードルを下げやすくなる点が重要です。
長期優良住宅の価値を売却時に支えるのは、認定そのものに加えて、維持保全計画や点検・修繕記録です。どの時期に点検を行い、どのような補修をしてきたのかが分かれば、買主は購入後のリスクや追加費用を見通しやすくなります。
既存(中古)住宅で不安視されやすいのは、「いつ何を直したのか分からないこと」です。履歴が整理されていれば、売主がきちんと管理してきたことの証明になり、買主の信頼を得やすくなります。
長期優良住宅を購入する買主は、住宅ローンの減税措置や金利の優遇措置を受けることができます。
既存(中古)住宅の住宅ローン控除では、認定長期優良住宅に該当する場合、一般の住宅より借入限度額が大きく設定されています。2026年度税制改正では、借入限度額が3,500万円まで引き上げられ、控除期間も13年に拡大されています。
なお、買主が19歳未満の子を有する子育て世帯、または夫婦のいずれかが40歳未満の世帯であれば、借入限度額が4,500万円まで拡充されます。
【フラット35】Sは、一定の技術基準を満たす質の高い住宅を取得する場合に、【フラット35】の借入金利を戸建て住宅では当初5年間引き下げる制度で、長期優良住宅はこの対象になります。
全期間固定金利である【フラット35】を希望する買主にとって、当初期間の金利引下げは分かりやすい利点です。
長期優良住宅は、最長50年の全期間固定金利ローンである【フラット50】の対象住宅で、返済中に住宅を売却する場合、借入金利のままで購入者に返済を引き継ぐことも可能です。
長期の返済計画を希望する層には大きな訴求力があり、また将来の金利環境次第では物件の選ばれやすさにつながる可能性があります。
既存(中古)住宅の売却では、価格、立地、築年数の近い物件が比較され、差別化が難しくなりがちです。長期優良住宅には、その旨を明記するだけで、ポータルサイトなどの検索で購入希望者の目に留まりやすくなるという利点があります。
認定通知書や維持保全計画、点検記録までそろっていれば、「築浅」「きれい」などの訴求ではなく、管理状態の良さを根拠付きで示せます。

長期優良住宅は売却時に強みになりやすい一方で、認定があるだけで自動的に高く売れるわけではありません。評価されるのは、あくまで認定内容に沿って実際に維持されている場合です。
長期優良住宅では、認定後も維持保全計画に沿った管理が求められます。点検や補修には一定の費用がかかり、記録の保管にも手間がかかります。つまり、売却時の強みは、住んでいる間に適切な手間とコストをかけてきた結果として生まれるものです。
管理が十分でなければ、長期優良住宅の価値を売却で生かしきれません。認定を受けていることと、現在も良好に維持されていることは、分けて考える必要があります。
住宅ローン控除などの優遇措置は、税制改正によって内容が変わることがあります。また、既存(中古)住宅の税制は、新築向けの特例とは別になっているケースが多くあり、両者は混同されやすいため、必ず確認するようにしましょう。
買主が見ているのは、認定の有無だけではありません。維持保全計画に沿った点検が行われているか、修繕履歴が残っているかといった、実際の管理状況も重視されます。
書類が見当たらない、点検履歴が途切れている、必要な補修が後回しになっているといった状態では、せっかくの長期優良住宅も十分な訴求力を持ちにくくなります。売却時に価値を伝えるには、認定だけでなく、実態として良好な状態が維持されていることが前提です。

長期優良住宅を高付加価値で売却したいなら、最初に行うべきことは「価値の見える化」です。認定の事実、維持管理の履歴、買主が使える制度の整理ができて初めて、不動産仲介会社も物件の強みを説明しやすくなります。
初めに用意するのが、その住宅が長期優良住宅として認定されていることを示す「認定通知書」です。これは、住宅の価値を証明する重要な書類です。また、売却時には所管行政庁へ提出し、買主への地位承継の承認を得る手続きが義務づけられていますので、保管状況を早めに確認しておきましょう。
もし認定通知書を紛失してしまった場合は、原則として再発行してもらうことはできません。ただし、代替書類を発行してもらえる可能性がありますので、所管行政庁に確認しましょう。
売却時に強い訴求力を持つのは、認定通知書だけではありません。維持保全計画書、定期点検の報告書、補修工事の記録、設備交換の履歴などがそろっていると、買主は「どう維持されてきたか」を具体的に理解でき、大きな安心材料となります。
また、長期優良住宅では、売主から買主へ維持保全計画書やその記録を引き継ぐことが義務づけられています。こうした制度面も踏まえると、維持保全の考え方を次の所有者へ引き継ぎやすい状態にしておくことは、付加価値を高めるうえで重要です。
長期優良住宅の売却では、買主が利用できる制度を事前に整理しておくことが重要です。住宅ローン控除、【フラット35】S、【フラット50】などの優遇措置が使える可能性があるのかを把握しておけば、内見や商談の場で具体的に説明することもできます。
長期優良住宅の売却では、不動産仲介会社がその価値をどこまで理解し、買主へ分かりやすく伝えられるかが成約を左右します。不動産仲介会社を選ぶ際は、査定価格だけでなく、認定住宅の強みをどう表現するか、維持管理記録をどう販売資料に落とし込むかまで確認したいところです。
「長期優良住宅なので安心です」という抽象的な説明だけでは不十分です。認定通知書があること、維持保全計画や点検履歴があること、買主の資金計画で優遇措置の訴求ができることなどを、一貫して伝えてくれる会社を選ぶことが重要となります。
さらに、家を建てたハウスメーカーへ相談することが、長期優良住宅の品質を正しく説明してもらうためにも非常に重要です。建物の構造や維持管理の履歴を最も熟知しているからこそ、認定住宅の価値を最大限に引き出した売却活動が可能になります。
長期優良住宅は、既存(中古)住宅市場において「品質を説明しやすい家」です。認定という公的な裏づけに加え、維持保全計画や点検・修繕履歴が整っていれば、買主の不安を和らげ、一般の住宅との差別化を図りやすくなります。
長期優良住宅と親和性の高い制度に、「スムストック」があります。大手ハウスメーカーが建てた住宅を独自に査定し、一定の基準を満たした住宅がスムストックに認定されます。
長期優良住宅であり、かつスムストックであるという両方のステータスを持つ住宅は、既存(中古)住宅市場において高い信頼を得られます。大手ハウスメーカーで住宅を建てられた方は、お住まいがスムストック対象建物か、建てたハウスメーカーにご相談していただくと良いでしょう。