03

不動産の相続税はどれくらいかかる?
計算方法や控除を解説

目次

    ※令和6年12月16日現在の法律に準じた内容です。詳しくはお近くの税務署等にお尋ねください。

    不動産を相続するときに、相続税がどれくらいかかるのか心配に感じる方も多いでしょう。特に、相続税の計算方法や控除は複雑に見えるかもしれませんが、知っておけば安心です。

    そこで本記事では、不動産相続税について、基本的なポイントから控除制度まで分かりやすく解説し、不動産相続税に関する注意点もお伝えします。相続手続きの中で、税金の負担を軽減するために必要な情報をしっかり押さえ、安心して手続きを進めましょう。

    不動産相続の際に発生する税金とは

    不動産を相続する際には、さまざまな税金の手続きが発生するため、複雑に感じることもあるでしょう。ここでは、不動産相続に関わる税金について分かりやすく解説していきます。

    相続税

    相続税は、亡くなった方の財産を受け継ぐときにかかる税金です。現金や預金、不動産、株式など、いろいろな財産が対象になりますが、借金のようなマイナスの財産も含まれます。不動産の評価額は地域ごとに異なり、正確に税金を計算するためには注意が必要です。また、相続税には基礎控除という仕組みがあり、一定の額を超えた部分にだけ税金がかかります。

    相続税の申告と納税は、相続が始まったことを知った日(通常は亡くなった日)の翌日から10カ月以内に行わなければなりません。また、相続を放棄したい場合は、3カ月以内に手続きが必要です。不動産の相続税は特に高額になりがちなので、事前にしっかりと準備しておきましょう。

    登録免許税

    登録免許税は、不動産の名義を変更する際に必要な税金で、相続による名義変更でも支払う義務があります。税額は相続した不動産の固定資産税評価額に基づいて計算され、税率は0.4%です。例えば、固定資産税評価額が2,000万円の不動産の場合、0.4%の8万円が登録免許税としてかかります。

    登録免許税は現金で納め、金融機関で支払うのが一般的です。また、司法書士に名義変更の手続きを依頼した場合、その報酬も全体の費用に含め、事前にしっかり確認しておく必要があります。相続手続きには期限があるため、早めに準備を進め、スムーズに手続きを行えるようにしましょう。

    相続税の基礎控除とは

    相続税には、基礎控除という非課税枠があり、相続税の計算において大切なポイントとなります。基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という計算式で求められ、相続人が多いほど控除額が増える仕組みです。例えば、相続人が3人いる場合、基礎控除額は4,800万円となり、この金額を超えた分に対してのみ相続税がかかります。

    遺産には、現金や不動産といったプラスの財産だけでなく、借金などマイナスの財産も含まれるため、正確な財産評価が必要です。相続税を計算する際は、基礎控除をしっかり把握し、正確に評価を行うことで税負担を軽減しましょう。

    不動産の相続税の計算方法

    不動産の相続税を正しく計算するためには、不動産の評価額をしっかりと理解することが大切です。ここでは、不動産相続税の計算方法を具体的な手順に沿って見ていきましょう。

    ①まずは遺産の総額を求める

    相続税を計算する際は、まず遺産の総額を把握することが大切です。遺産には、現金や預貯金、不動産、株式などのプラスの財産だけでなく、借金や未払い金などのマイナスの財産も含まれます。また、生命保険金や死亡退職金などは「みなし相続財産」として扱われ、これらも遺産の総額に加算される財産です。

    このようなプラスとマイナスの財産を差し引いた「正味の遺産総額」が相続税の対象額となります。さらに、葬儀費用や仏壇、墓石などの一部は非課税財産として差し引けるため、これらも考慮して最終的な遺産総額を計算しなければなりません。このように、相続税は、遺産全体の評価を正確に行った上で計算されるので、しっかりと準備と確認を行いましょう。

    ②土地の評価額を計算する

    自用地の相続税評価は、「路線価方式」か「倍率方式」のどちらかで計算します。自宅の土地がどちらに該当するかは、国税庁のWebサイトにある「路線価図・評価倍率表」のページで簡単に調べることが可能です。

    <路線価方式>

    市街地にある土地の相続税評価は、路線価方式を使って計算します。路線価とは、その土地に面している道路に設定された価格のことで、「200D」や「300E」といった形で表示され、数字に1,000をかけた金額が、1m2あたりの評価額です。例えば、200Dなら1m2あたり20万円で、この路線価に土地の面積を掛けて評価額を算出します。

    もし、200m2の土地が路線価250Eの道路に接している場合、相続税評価額は「25万円×200m2=5,000万円」です。また、奥行きが長い土地は使い勝手が悪いため、「奥行価格補正率」が適用されるなど、土地の形状によって評価額が補正される場合もあります。

    <倍率方式>

    郊外の土地など、路線価が決められていない地域では、倍率方式を使って相続税の評価額を計算します。倍率方式の場合は、まず固定資産税評価額を確認し、国税庁のホームページにある「評価倍率表」から該当地域の倍率を調べましょう。その倍率を固定資産税評価額にかけると、その土地の相続税評価額が分かります。

    例えば、倍率が1.1倍であれば、固定資産税評価額に1.1をかけた金額が評価額です。固定資産税評価額は、毎年市区町村から送られる納税通知書に記載されているため、そちらを確認して計算しましょう。

    ③建物の評価額を調べる

    建物の評価額は、固定資産税評価額をもとに計算され、市区町村から毎年送られる「固定資産税課税明細書」に記載されている金額が適用されます。建物の評価額は、「固定資産税評価額×1.0」で求められるため、固定資産税評価額がそのまま相続税評価額になるというわけです。

    また、評価額は、被相続人が住んでいた自宅も相続財産として課税対象になります。

    不動産相続税で使える控除

    相続税には基礎控除以外にも、条件を満たせば税額を減らせる控除や特例があります。どの控除が適用されるかはケースによって異なるため、事前にしっかりと確認しておくことが大切です。適切に制度を利用し、相続税の負担を軽減しましょう。

    ここからは、不動産相続で活用できる控除制度について詳しく解説します。

    小規模宅地等の特例

    小規模宅地等の特例は、被相続人が住んでいた自宅や事業用の土地を相続する際、一定の条件を満たせば、最大80%まで土地の評価額を減額できる制度です。自宅の土地では、330m2までの部分が対象となり、大幅に評価額を下げられます。

    相続税を支払うことが困難で自宅を手放すことにならないよう配慮された制度で、適用するには、配偶者や同居していた親族がその土地を相続し、引き続き居住するなどの条件があるため確認しましょう。また、別居していても一定の要件を満たせば適用される「家なき子特例」という制度もあります。

    配偶者控除

    配偶者控除は、被相続人の配偶者が相続する場合、相続税を大幅に軽減できる制度です。この控除では、「1億6,000万円」または「配偶者の法定相続分相当額」のどちらか大きいほうの金額まで、相続税がかかりません。例えば、配偶者が1億6,000万円までの財産を相続しても、相続税はゼロになります。さらに、法定相続分以内であれば1億6,000万円を超える相続でも非課税です。

    ただし、相続税の申告期限までに遺産分割を終わらせる必要があります。また、配偶者が亡くなった後の相続で税負担が増える「二次相続」も考慮して計画することが大切です。

    未成年者控除

    相続人が未成年の場合、将来の教育費や生活費を考慮して、相続税を軽減できる制度があります。控除額は、相続時の年齢をもとに計算され、「18歳までの残り年数×10万円」で算出されます。

    例えば、相続時に15歳の未成年者の場合、「18歳-15歳=3年」で、3年分の控除額は30万円です。この金額が相続税から差し引かれ、未成年の相続人がいる場合は、負担が軽減されます。

    贈与税額控除

    贈与税額控除は、生前に財産を贈与されて贈与税を支払っていた場合に、その金額を相続税から引くことができる制度です。生前贈与された財産は相続税の対象になるため、贈与税と相続税が二重にかからないようにするために活用します。

    対象となるのは、亡くなる前の3年以内に贈与された財産や、相続時精算課税制度を利用して贈与された財産です。この控除を利用することで、余計な税金を支払わずに済むので、しっかり申告して控除を受けましょう。

    障害者控除

    障害者控除は、85歳未満の障害者が相続人である場合に、相続税が軽減される制度です。この制度は、障害者の経済的な負担を減らすために設けられており、一般障害者なら85歳までの残り年数に対して1年あたり10万円、特別障害者なら1年あたり20万円が控除されます。

    例えば、50歳の一般障害者の場合は「(85歳-50歳)×10万円=350万円」が控除額です。また、控除額が相続税を上回る場合は、残った金額をほかの家族の相続税から差し引くこともできます。

    相次相続控除

    相次相続控除は、10年以内に相続が連続して起こった場合に、相続税の負担を軽減できる仕組みです。通常、相続が続くとその都度相続税を支払う必要がありますが、この控除を利用すれば、前回の相続で支払った税金の一部を今回の相続税から引くことができます。

    例えば、祖父が亡くなり、その後10年以内に父が亡くなった場合、祖父の相続時に支払った相続税の一部を今回の相続税から控除できるというわけです。ただし、前回の相続で税金が発生していなかったり、相続放棄をしていたりした場合は対象外になります。

    不動産相続税に関する注意点

    不動産の相続には多くの税金や手続きが絡むため、事前に注意すべき点がいくつかあります。最後に、不動産相続税における重要な注意点について確認しておきましょう。

    相続後や売却にも税金は発生する

    不動産を相続すると、相続時に登録免許税や相続税がかかるだけでなく、その後もさまざまな税金が発生します。不動産を所有している間は毎年固定資産税が発生しますし、都市計画区域内なら都市計画税も払わなければなりません。

    さらに、相続した不動産を売却して利益が出た場合には、譲渡所得税もかかります。相続した不動産には、手に入れてから売るまでずっと税金がついて回るので、しっかりと計画を立てておくことが大切です。

    不動産の共有はできるだけ避ける

    不動産を複数の相続人で共有することはできますが、できるだけ避けたほうが無難です。なぜなら、共有することで売却や建て替えをする際に、共有者全員の同意が必要になるからです。

    さらに、共有者の1人が亡くなると、その持分がまた相続され、次第に共有者が増えていきます。その結果、関係者同士が疎遠になり、同意を得るのが難しくなることも多くあります。こうした問題が空き家問題の原因にもなっているため、不動産はできるだけ共有せず、1人が相続する形にするのがおすすめです。

    相続放棄をした人がいる場合も基礎控除額は減らない

    相続放棄をした場合、その人は財産や債務を引き継ぐことがなくなりますが、相続税の基礎控除額を計算する際は、相続放棄をした人も相続人として数えられます。民法では相続放棄をした人は、初めから相続人ではなかったと見なされますが、相続税法上では放棄があっても基礎控除の人数に影響しません。

    例えば、配偶者と子ども2人が相続人の場合、1人が相続放棄をしても、基礎控除の計算に使う相続人の人数は変わらず3人です。このルールは、相続税の公平性を保つために設けられています。

    まとめ

    不動産の相続税は、財産の評価額や控除の適用によって大きく変わってきます。まずは、財産を正確に評価し、活用できる控除や特例を活用することが大切です。

    また、税金の手続きには期限や条件があるので、早めに準備を進めることがスムーズな相続につながります。相続税は複雑に感じることもありますが、専門家のアドバイスを受けながら効率よく対応しましょう。

    この記事を書いた人

    スムストック編集部
    スムストック編集部
    スムストックの公式ブログです。おうちに関する情報をお届けいたします。
    既存(中古)住宅の売却・購入ならスムストックにお任せください!

    関連記事

    関連記事はありません

    AreaPDFバナーClose AreaPDFバナー