※2025年9月4日現在の法律に準じた内容です。
住宅の売却にはさまざまな準備が必要です。その中でも、査定は家の価値を正しく把握するために欠かせません。しかし、査定を依頼する前には必要な準備があるので、事前に確認しておくことが大切です。
今回は、家を売りたい方に向けて、査定前に必要な準備や、注意点を解説します。これから家を売ろうと考えている方はぜひ参考にしてください。
まずは査定前にやっておくべき準備や確認事項を6つ紹介します。どれも大切なことなので、よく確認してください。
査定には書類が必要です。戸建てとマンションで必要な書類が異なる点にも注意しましょう。
戸建て | マンション |
・建築確認通知書 ・間取り図 ・本人確認書類 ・固定資産税納税通知書 ・売買契約書 ・新築時の請負契約書 | ・管理規約 ・長期修繕計画表 ・使用規則 ・本人確認書類 ・売買契約書 |
戸建て | マンション |
・境界確認書 ・住宅性能評価書 ・住宅ローン残高証明書 ・リフォーム・増改築・メンテナンスの記録 ・登記識別情報もしくは権利証 | ・パンフレットなど間取りが分かるもの ・修繕積立金が確認できる書類 ・総会の議案書 ・登記識別情報もしくは権利証 |
なお、書類が一部なくても査定自体は可能ですが、正確な価格を算出するのが難しくなる場合があります。そのため、できるだけ必要書類は揃えておくことをおすすめします。
また、不動産の状態や種類などによっても必要な書類が異なります。具体的に何が必要になるかは、査定を依頼する不動産会社に必ず確認してください。
住宅ローンが残っている物件を売却する場合、残債を全額一括返済しなければなりません。そのため、売却価格がローン残高をカバーできるかどうかを確認することが重要です。
残高が不明な場合は、住宅ローンを組んでいる銀行に依頼すれば残高証明書を発行してもらえます。
修繕履歴は住宅の状態を保つために非常に重要です。適切な時期に修繕が行われている物件は評価が高く、特に屋根・外壁塗装やシロアリ予防などの定期的なメンテナンスは住宅の価値を維持するために効果的です。これらの修繕を実施した履歴をまとめておくことで、買主や不動産会社に対して強いアピールになります。いつ、どこを、どのように修繕したかをしっかり記録しておきましょう。」
土地の境界が未確定の場合は、査定時にその旨を伝えることが大切です。未確定の場合は、引き渡し前に境界の確定を行うことが一般的です。
また、土地の利用履歴は、土壌汚染や地中障害物の有無を確認するために、査定時に尋ねられることがあります。
査定は住宅の価格を調べるためのものですが、相場を知らなくても問題ないと考える人もいるかもしれません。しかし、査定前に相場を調べておくことで、査定価格が適正なのかを判断することができるため、非常に重要です。もし査定価格が相場から大きく離れている場合は、不動産会社に理由を聞いてみることもできます。
物件の周辺環境は、売却価格に大きな影響を与える要因です。駅や病院、学校、商業施設など、生活に便利な施設へのアクセスは、買い手にとって重要なポイントとなります。そのため、周辺環境が整っていることをアピールすることで、査定価格を高くすることも可能です。
また、周辺の治安や静かな環境も、住みやすさに直結します。これらの要素をしっかりと調べて売却前にアピールポイントとして伝えることで、より高い査定がつきやすくなる可能性があります。
続いて、査定を依頼する際の注意点を5つ紹介します。
信頼できる不動産会社を選ぶことが非常に重要です。信頼できる不動産会社は物件をしっかりと評価してくれるだけでなく、必要なサポートを手厚く提供してくれます。
また、不動産に関する知識があるだけでなく、建物のことを理解しているかも判断基準にしましょう。建物に関する知識があれば、築年数だけでなく、内部の状態や構造的な部分まで総合的に評価し、より正確な査定をしてくれます。
少しでも物件の状態をよく見せようと、クリーニング会社に依頼して片付けやハウスクリーニングを検討する方もいるのではないでしょうか。しかし、実際には、片付けやハウスクリーニングの有無で査定価格に大きな差が出ることはほとんどありません。
そのため、過度に費用をかけることはおすすめできません。片付けにかかる費用が結果的にマイナスになるリスクのほうが大きいです。内覧前に掃除をするなど、お金をかけずにできることだけで良いケースが多いです。
査定結果は、査定報告書にまとめられます。査定報告書には、各項目に対する評価が記載されており、不動産の知識がない方でも分かりやすいように作成されていますが、場合によっては何の項目か分かりにくいこともあるかもしれません。
そういった場合は、分からないまま放置するのではなく、何に対する評価なのか必ず不明点を不動産会社に確認しましょう。分からないままにしておくと、後にトラブルが発生するリスクも高くなります。
もし査定価格どおりに物件が売れた場合でも、そこから仲介手数料、税金、各種諸経費などさまざまな費用が差し引かれます。
物件によっても異なりますが、一般的には1割程度は手元に残る金額が減ると考えておくと良いでしょう。売却後に必要な費用をしっかり把握しておくことで、予期せぬ金額の差に驚かないようにしましょう。
さらに注意すべき点は、査定価格と実際の売出価格が必ずしも一致しないことです。最初に、査定価格と売主の希望価格からバランスを考えて売出価格を決定します。売出価格は、査定価格と同額、またはそれより高く設定することもあれば、低めに設定することもありますが、どれで売り出すかが重要です。
査定価格より高値を付けた場合、高値で売れる可能性もありますが、買手が見つかるまでに時間がかかることが多くなります。反対に、低価格で売り出すと買い手は見つかりやすいものの、その分利益が少なくなります。
そのため、売出価格は最初に設定したまま放置するのではなく、市場の反応を見ながら調整を行うのが一般的です。売出期間が長くなった場合、価格調整をすることで、最終的には買い手と売主が合意した価格で売買が成立します。査定価格から1割程度価格が減ることも珍しくないため、その点も考慮に入れておきましょう。
査定を依頼する際は、下記の3つについて、不動産会社に伝えておきましょう。
まずは希望事項を不動産会社にしっかり伝えましょう。特に重要なのが、売却時期と売却目的、希望価格です。住宅の売買には半年程度時間がかかることが多く、早くても4カ月程度の期間を見込んでおくべきです。よって、できるだけ早く売却したい場合は、最初に希望の時期を伝えておくことで、不動産会社側も買い手を見つけやすくなるように動いてくれます。
早期売却を優先する場合、売却価格が希望通りになりにくくなる可能性があるため、希望事項の優先順位を決めておくことが大切です。
あまり価格に対する希望がそれほど強くない場合は、「できるだけ高く売ってほしい」と伝えるだけでも問題ありません。また、近隣住民に売却を知られたくない場合は広告を控えてほしい旨なども伝えておきましょう。査定依頼前に、希望事項を分かりやすくリストアップしておくことをおすすめします。
建物のセールスポイントは、住宅の価値に直結する情報です。たとえば長期優良住宅や、住宅性能評価書、建物状況調査の報告書などが該当します。特に、耐震基準は重要です。1981年6月以降の「新耐震基準」に基づいて建築された住宅であれば、住宅ローン控除を受ける際に追加の証明は不要です。
一方、1981年5月以前の「旧耐震基準」の建物でも、耐震基準適合証明書や既存住宅売買瑕疵保険を利用して新耐震基準に適合していることを証明できれば、住宅ローン控除の対象になります。また、実際に住んでいる人にしか分からない「住みやすさ」「使い勝手」なども物件のセールスポイントになります。さらにハウスメーカーの長期保証が付いている物件や、スムストックなどの認定を受けている物件は、大きな強みとなります。
反対に、住宅に雨漏れや傾き、設備等の不具合などがある場合も、査定前に必ず不動産会社へ正直に伝えることが大切です。一般的に、買い手が購入後に、購入時に伝えられていなかった住宅の不具合に気がついた場合、売主側が責任を負わねばなりません。この責任のことを「契約不適合責任」と呼びます。
住宅に不具合があると、査定価格にも響いてしまいますが、隠してもいずれ発覚します。隠ぺいしようとすると、場合によっては法的トラブルに発展するリスクもあるので、必ず正直に伝えましょう。
また、住宅そのものに不具合がなくても、近隣からの騒音、振動、日照障害等の環境的要因や、過去に事故や事件が発生した場合の心理的要因も契約不適合責任の対象です。不具合は正確に伝えることで、不動産会社側からアドバイスを受けられることもあります。
住宅の査定方法は主に3種類です。最後に、それぞれの査定がどのようなものなのかについて説明します。
机上査定とは、別名「簡易査定」とも呼ばれる査定です。実際に物件を訪問せず、物件に関する情報や周辺地域の相場、不動産会社の近隣成約データなど、さまざまなデータをもとに査定します。よって、最新の情報に類似物件の成約があるとより精度が上がります。
机上査定では情報をもとに査定を行なうため、ほかの査定方法に比べて短時間で済むのがメリットです。ネットで一括査定をする際も、机上査定で価格が出されます。提出書類などが不要で、査定費用もかからず、個人情報や物件情報だけで査定ができる手軽さもメリットです。
ただし、実際の物件を見ていないことから、実際の価格と乖離しやすいことが注意点です。近隣の環境、リフォーム・修繕の有無などの細かな部分を査定できないため、正確な査定価格を知りたい場合には適していません。あくまでも、本格的に売却活動を始める際の参考程度と考えておきましょう。
訪問査定は、実際に不動産会社のスタッフが物件を訪れて現地調査をする査定です。直接物件を見ることで、机上査定では分からない物件の状況、周辺環境なども知ることができ、より正確な査定価格を知ることができるメリットがあります。
ただし、査定価格が出るのに1週間ほどかかるため、その場ですぐに査定価格を知ることはできません。物件の状況をより詳しく把握できるよう、事前に住宅の図面、リフォーム・修繕履歴などをまとめておくことで、よりスムーズな査定が可能になります。
スムストックとは、大手ハウスメーカー10社が加盟している「一般社団法人 優良ストック住宅推進協議会」が定めた基準をクリアした、既存(中古)物件の中でも優れた住宅性能を持つと認められた物件のことです。
スムストック査定は、その建物を現在建築したらいくらかかるかという「再調達価格」を算出し、その再調達価格を、耐用年数の異なる構造・躯体部分と設備・仕様部分に分け、さらには収納・通風・使い勝手・可変性・これまでに行ったリフォーム工事やメンテナンス状況を加味して、建物本来の価値を正しく評価する方法です。
従来では築年数に重きを置いた査定方式が一般的でした。しかし、スムストックでは50年以上の長期修繕計画の設定と実施が条件に含まれているため、適切なメンテナンス・修繕を行った物件であれば、築年数が経過した物件でも正しく評価されるようになっています。
特徴的なのが、従来の査定方式とは異なる分類で行う点です。これまでは建物と土地の価格を合計した総額で表示されていたため、建物単体の価格はわかりませんでした。
スムストックでは土地と建物を分けて価格を表示するため、それぞれの価値を正しく知ることができます。また、建物も構造躯体と内装設備を分けて査定することで、従来の査定方法に比べてより適正な価値が付けられるようになっています。
スムストック物件として認められるには、以下の要件すべてを満たす必要があります。
スムストックの対象となるのは、一般社団法人 優良ストック住宅推進協議会に加盟しているハウスメーカー10社が建てた住宅です。下記以外のハウスメーカーで建てた住宅は、対象外となるため注意してください。
(2025年8月現在)
詳しくは、スムストック公式ホームページをご確認ください。
住宅の査定は物件の種類や査定方式によって必要なものが異なりますが、どれも事前によく準備することが大切です。また、住宅の価値を正しく評価してもらうためにも、信頼できる不動産会社を選びましょう。