02

住宅ローンがある家はどうやって財産分与する?
注意点と併せて解説!

目次

    ※令和6年12月16日時点の法律に準じた内容です。

    財産分与では住宅などの不動産も対象になります。しかし、住宅ローンが残っている場合は、財産分与の方法について気をつけなければならないことがあります。

    そこで今回は、住宅ローンが残っている住宅の財産分与の方法や注意点を解説しますので、ぜひ参考にしてください。

    そもそも財産分与とは

    まずは財産分与がどのようなものかをこちらで解説します。

    財産分与とは?

    財産分与とは、離婚した夫婦が財産の分与を請求する制度のことです。結婚期間中に夫婦で協力して築いた財産を、離婚時に清算する仕組みと考えるとよいでしょう。財産分与は夫婦のどちらにも請求権があり、有責配偶者も請求できます。なお、請求期限は離婚成立から2年です。原則として、2年を延長したり延期したりすることはできません。

    財産分与の割合はそれぞれの貢献度によって決まりますが、原則として2分の1で分けます。一方が専業主婦(夫)であっても、家事や子育てへの協力があったからこそ財産が築けたと考えられるため、一般的には2分の1の割合となることが多く、また、有責者は2分の1よりも割合が少なくなる可能性があることも覚えておきましょう。

    なお、例外的に財産分与の割合が変わることがあります。築いた財産が夫婦どちらかの特別な能力や資格(プロのスポーツ選手、医者、弁護士、音楽家など)によるものであった場合や、資産が数億円以上など非常に多くの財産がある場合などが該当します。

    財産分与の対象になるもの

    財産分与の対象になるもののことを「共有財産」と呼びます。共有財産には、下記のようなものが含まれています。

    • 預貯金
    • 住宅、土地などの不動産
    • 保険
    • 退職金
    • 家具・家電などの家財
    • 美術品や車など金銭的価値があるもの
    • 年金
    • その他夫婦が共同で所有しているもの

    財産分与の対象にならないもの

    財産分与では下記のようなものは「特有財産」と呼ばれ、財産分与の対象にはなりません。間違えないよう、注意してください。

    • 結婚前の預貯金
    • 相続や贈与によって得た財産(これらを使って得た収入含む)
    • 婚姻中に夫婦の協力とは関係なく得た財産
    • 名義が子どもなど第三者の財産
    • 企業や法人名義の財産

    ただし、夫婦の協力がなければ維持や築くことが難しいと判断された場合は、対象になることもあります。

    また、どちらか一方が事業主の場合、社用車など会社名義の財産は財産分与の対象ではありませんが、自家用車としても使用していた場合は判断が異なることがあります。自営業の場合は、事業用と家庭用の区切りがあいまいになっているものが多く、名義以外に用途で判断されることがある点に注意してください。

    財産分与の種類

    財産分与には3つの種類があります。

    <清算的財産分与>

    清算的財産分与は、夫婦が婚姻期間中に共同で取得した財産を離婚時に分け合うものを指します。2人で協力して築いた、または維持した財産をそれぞれの貢献度によって分けることで、仮に一方が専業主婦(夫)であっても問題ありません。また、清算的財産分与は有責配偶者からであっても請求できます。

    <扶養的財産分与>

    離婚後に夫婦のどちらか一方が、経済的に生活が著しく苦しい状態に陥る可能性がある場合に、生活を補助する目的として行う財産分与を指します。心身の健康状態や、高齢で働くことが難しいなどの場合が該当します。つまり、離婚後も相手を扶養するようなものと考えるとよいでしょう。一度にではなく、定期的に一定額を渡す方法が多いです。

    <慰謝料的財産分与>

    夫婦の一方が有責配偶者であり、離婚原因になった場合、有責配偶者に対して請求できるのが慰謝料的財産分与です。ただし、一般的には慰謝料と財産分与は別のものであり、それぞれ別々に請求することが多いです。慰謝料的財産分与は、慰謝料と財産分与を区別せず、まとめて財産分与として請求する方法と考えるとよいでしょう。

    住宅ローンがある不動産の財産分与に関する注意点

    不動産の財産分与では、不動産を売却して夫婦で分配する方法と、夫婦の一方が不動産を取得して他方に代償金を支払う方法があります。住宅などの不動産を財産分与する際は、住宅ローンの内容や状態に注意しましょう。

    離婚後のローンの名義人変更は基本的にできない

    財産分与で住宅ローンの名義人ではないほうが住み続ける場合、ローンの名義人を変更しようと考えるのではないでしょうか。しかし、住宅ローンは通るまではさまざまな審査を行います。そのため、住宅ローンの契約者変更を申し出ると、金融機関が住宅ローンの審査を再びゼロからやり直さなくてはなりません。加えて、連帯保証や連帯債務が絡んでくるため、ローンの名義人変更は非常に難しく、基本的にはできないものと考えるほうがよいでしょう。

    どうしても名義人変更をしたい場合は、あとで紹介するように、別の金融機関から新たに融資を受けて、ローンを借り換えする方法があります。必要に応じて検討してみてください。

    アンダーローンとオーバーローン

    住宅ローンがある不動産の場合は、アンダーローンかオーバーローンのどちらの状態にあるかで、財産分与の対処が異なります。

    <アンダーローンとは>

    アンダーローンとは、不動産の査定価格がローンの残債を上回る状態のことです。例を挙げると、査定価格2,000万円の家で住宅ローンの残債が800万円の場合などが該当します。

    アンダーローンの場合、査定価格からローンの残債を差し引いて、プラスとなる金額が財産分与の対象となります。

    <オーバーローンとは>

    オーバーローンとは、アンダーローンの反対で、不動産の査定価格がローン残債を下回る状態のことです。例えば、1,000万円の査定価格が付いた住宅のローンが1,200万円残っている場合などが該当します。この場合、住宅を売却しても利益にはならず、ローンの完済にも足りません。

    オーバーローンの場合は、査定価格からローンの残債を差し引くとマイナスとなるため、財産分与の対象とはなりません。ただし、他にプラスの財産があると、一般的には、マイナスとなる金額をプラスの財産から差し引いて、財産全体でプラスとなる金額が財産分与の対象となります。

    不動産の財産分与を考える際に重要なポイント

    住宅ローンが残っている不動産の財産分与では、以下の4つのポイントが重要です。

    <土地と住宅の名義人が誰か>

    最初に土地と住宅の名義が、単独名義か共有名義か、共有名義であれば持分はどうかを確認しましょう。不動産の名義は、保管している登記事項証明書(登記簿謄本)で確認できます。手元にない場合は、有料となりますが、法務局の窓口のほか、郵送やオンラインで交付請求できます。

    <住宅ローンの契約状況>

    住宅ローンの名義人など契約内容についての確認も重要です。離婚後に住宅ローンを支払う義務を負うのは、ローンの名義人となるからです。もともと住宅ローンは、夫婦どちらかが名義人になることが一般的でしたが、近年は夫婦で組める「ペアローン」(夫婦それぞれがローンを借り入れ、お互いの債務を連帯保証するローン)も広まりつつあります。住宅ローンの契約状況は、契約書で確認することができますが、もし分からなければ金融機関に問い合わせましょう。

    また、住宅ローンの連帯保証人、連帯債務者も必ず確認してください。離婚時に連帯保証人・連帯債務者をそのままにしておくと、万が一相手がローンを滞納した場合、請求が来るリスクがあるからです。特にペアローンの場合は、夫婦ともにローンの名義人となっているだけでなく、お互いが連帯保証人にもなっているので、そのままにしておくと、離婚後も継続して夫婦でローンを返済することになり、また、離婚後に相手がローンを滞納した場合は全額を負担することにもなります。そのため、ペアローンを組んでいる場合は、金融機関の承諾を得て一方の債務をもう一方が引き取る「免責的債務引受」や、ローンの借り換えによって、離婚時にローンを一本化することが望ましいです。

    <住宅ローンの残高>

    住宅ローンの契約状況と併せて、ローンの残高がいくらなのかも調べておきましょう。アンダーローンかオーバーローンのどちらの状態にあるのかを知るためにも、ローンの残高の確認は必須です。住宅ローンの残高は、金融機関から発行される返済予定表などを確認することで調べられます。もし分からなければ、借入先の金融機関で残高証明書を発行してもらったり、窓口に問い合わせたりすれば確認できます。ただし、残高証明書の発行は基本的に有料なので注意してください。

    <土地と住宅の評価額>

    土地と住宅の評価額は、評価額がローンの残高よりも高いか低いかで財産分与の対処が異なってくるので、必ず把握しておきましょう。評価額は、不動産会社に査定を依頼すれば知ることができます。ただし、1社だけの査定だと本当に査定価格が適正なのか判断ができません。できれば3社程度に査定を依頼し、相場感を知ることをおすすめします。

    住宅ローンの残った不動産を売却して財産分与する方法

    離婚後、夫婦のどちらも継続して住まない場合は、売却がおすすめです。売却すれば現金化でき、夫婦で分けることができます。ただし、売却の際は住宅ローンについて注意してください。

    アンダーローンの住宅を売却する場合

    アンダーローンの場合、住宅を売却してローンが完済できるだけでなく、利益も出るのが特徴です。住宅を売却し、ローンを完済して残った利益が財産分与の対象となり、2人で分けられるので、簡単に財産分与ができます。また、居住用財産の譲渡所得の特別控除(3,000万円の特別控除)を利用すれば、譲渡益から3,000万円まで控除でき、譲渡所得税を抑えることができます。

    ただし、住宅の売却タイミングによっては価格が変動することに注意してください。また、住宅の売買には時間がかかることが多いので、できるだけ迅速に行動することが大切です。どうしても早く売却したい場合は、不動産業者への買取依頼も検討するとよいでしょう。

    オーバーローンの住宅を売却する場合

    オーバーローンの住宅を売却するには、抵当権(ローンの返済が滞った際に金融機関が不動産を差し押さえ、競売にかけることができる権利)がついたままでは売れないので、住宅ローンを完済して抵当権を抹消する必要があります。一括返済にあたって住宅の査定価格で足りない分は、原則としてローンの名義人が負担することになります。ただし、夫婦の相談によっては2人で負担することも可能です。

    なお、住宅ローンの完済は売却成立時と同時でも問題ありません。オーバーローンの場合でも、返済予定によっては売却できることがありますので、詳しくは金融機関に相談してください。

    任意売却する場合

    住宅を売却したいが住宅ローンの一括返済が難しい場合には、ローンが残ったまま売却する方法として任意売却があります。

    任意売却は、借入先の金融機関の許可を取った上で住宅を売却する方法です。任意売却には、競売に比べて高い価格で売却できる可能性がある、売却後もローンを分割返済することが認められることがあるなどのメリットがあります。しかし、一定期間が過ぎても買い手が見つからない場合は競売にかけられてしまうリスクがありますので、よく検討することが大切です。

    売却して住み続ける場合

    自宅を売却しても住み続ける方法として、リースバックがあります。リースバックとは、一度自宅を不動産会社に売却した後に、不動産会社と賃貸借契約を結んで売却した家をそのまま借りて住み続ける方法です。リースバックは将来、再び買い戻すこともできるので、将来設計や資産状況に合わせて検討してみるのもよいかもしれません。ただし、リースバックを利用すると、不動産の買取価格が相場より安くなることを覚えておきましょう。

    なお、オーバーローンの場合、住宅ローンが残っている状態ではリースバックを利用することはできません。

    どちらか一方が不動産を取得して住み続ける方法

    売却するのではなく、できれば住み慣れた自宅を取得してそのまま住み続けたいと考える人もいるかもしれません。そのような場合は、住宅ローンの名義人が誰かで対応が異なります。

    また、アンダーローンの場合は、相手に代償金を支払う必要があり、代償金は査定金額からローンの残高を差し引いた金額の2分の1となるのが一般的です。

    名義人が住み続ける場合

    住宅ローンの名義人が自宅を取得し継続して住み続ける場合は、難しい手続きはありません。名義人が住宅ローンを支払いながら継続して住み続けるため、離婚前と同じような生活が送れます。なお、住宅ローンは名義人が支払う以外にも、夫婦で折半する方法がありますが、どちらを選ぶかは話し合いで決めなければなりません。

    名義人が出ていく場合

    住宅ローンの名義人が出ていく場合は、残っているローンはローンの名義人が返済することになり、返済が滞った場合に差し押さえられるなどのリスクがあるため、できれば住宅ローンを完済する、またはローンの名義人を変えることをおすすめします。しかし、これまでに紹介したように、契約済みの住宅ローンの名義人変更は非常に難しいです。そのような場合は、住宅ローンの借り換えを検討してみましょう。

    住宅ローンの借り換えとは、住宅ローンの契約を結んでいる金融機関とは別の金融機関と新たにローンを組むことです。既存の住宅ローンの残債は、新規の住宅ローンで完済し、今後は新規の住宅ローンを返済することになります。ただし、当然ながら住宅ローンを新たに組む際もさまざまな審査が必要になるので、必ずしも借り換えが利用できるわけではありません。

    なお、住宅ローンの名義をそのままにして、住み続けるほうがローンを支払う方法(履行引受)もありますが、トラブルが起こりやすいので、あまりおすすめできません。

    まとめ

    住宅の財産分与は、住宅ローンの状況によって対応が異なります。また、財産分与は夫婦の話し合いから始めることになるので、住宅ローンの内容を把握しておくことは必須となります。お互い納得がいく財産分与をするためにも、困ったり悩んだりした際は、早めに専門家を頼ることをおすすめします。

    この記事を書いた人

    スムストック編集部
    スムストック編集部
    スムストックの公式ブログです。おうちに関する情報をお届けいたします。
    既存(中古)住宅の売却・購入ならスムストックにお任せください!

    関連記事

    AreaPDFバナーClose AreaPDFバナー