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不動産を売却するとかかる税金
計算方法や利用できる控除を解説!

目次

    ※令和6年12月16日現在の法律に準じた内容です。詳しくはお近くの税務署等にお尋ねください。

    不動産を売却すると、利益が出た場合に税金がかかることをご存知ですか? 特に大きな金額が動く不動産売買では、税金の負担も少なくありません。

    本記事では、売却時にかかる税金の種類や計算方法について、分かりやすく解説します。また、利用できる控除をうまく活用することで税金の負担を軽減する方法や、不動産売却に関する注意点も紹介します。不動産売却を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

    不動産の売却で発生する税金の種類

    不動産を売却すると、いくつかの税金が発生し、代表的なものには譲渡所得税や住民税、登録免許税などがあります。それぞれの税金について、どのように計算されるのか確認しておきましょう。

    印紙税

    不動産取引では契約書を売主・買主のそれぞれで作成し、印紙を貼ります。契約書に収入印紙を貼り、消印することで納税が完了します。印紙税額は、契約金額によって決まっており、例えば契約金額が500万円超1,000万円以下の場合は、5,000円の印紙税が必要です。

    不動産取引では契約書を2通作成することが多く、それぞれに印紙を貼ります。また、電子契約では印紙税がかからないため、紙の契約書を使う場合との違いも知っておくと便利です。

    登録免許税

    登録免許税は、不動産を売買するときに必要な登記手続きにかかる税金です。例えば、住宅ローンが残っている不動産を売る場合、物件の引き渡し前に「抵当権抹消登記」が必要で、その際に1件あたり1,000円の登録免許税がかかります。もし売主の住所が古いままなら、住所変更の登記も必要になり、住所変更の登記も同じく1,000円です。

    所有権を買主に移す登記費用は、基本的には買主が負担しますが、状況によっては売主が負担するケースもあります。これらの手続きは、司法書士に依頼して進めるので、その報酬も忘れずに確認しておくと安心です。

    仲介手数料と登記費用の消費税

    不動産を売却する際、不動産会社に仲介を依頼することが一般的であり、仲介手数料には消費税がかかります。手数料は売却価格によって決まりますが、2024年7月1日以降は仲介手数料の特例が設けられました。特例では物件価格800万円以下の宅地建物の仲介については、仲介に必要な費用のうち、上限額「30万円×1.1倍の金額」以内であれば、上限を超えて受領できるとされています。よって、売買価格800万円以下の不動産は、仲介手数料の上限が33万円となります。

    <仲介手数料上限の原則>

    売買価格仲介手数料の上限
    200万円以下売買価格×5%+消費税
    300万円以下売買価格×4%+2万円+消費税
    400万円以上売買価格×3%+6万円+消費税

    また、登記を司法書士に依頼する場合も、その報酬に消費税がかかります。不動産を売却する際は、仲介手数料や登記費用にかかる消費税をあらかじめ把握しておくことが大切です。

    不動産売却で利益が発生した場合にかかる税金

    <譲渡所得税>

    不動産を売却して利益が出た場合にかかる税金が「譲渡所得税」です。譲渡所得とは、不動産を売って得た利益のことを指し、この利益に対して所得税や住民税が課されます。譲渡所得は、売却価格から購入時の費用や売却時にかかった費用を差し引いて算出され、その金額がプラスであれば課税対象です。

    また、不動産以外にも、株式や骨董品などを売却した場合にも譲渡所得が発生します。譲渡所得税は、売却益に応じて支払うことになりますが、税額は保有期間や特定の控除により異なるため、正確な計算が必要です。

    <復興特別所得税>

    復興特別所得税は、東日本大震災の復興資金を確保するために導入された税金で、2037年まで支払いが義務付けられています。この税金は、所得税と一緒に徴収され、税率は所得税の2.1%です。

    不動産を売却して利益が発生した場合、譲渡所得税を計算する際に、同時に復興特別所得税も計算されます。譲渡所得税の計算が終わったら、その金額に2.1%を掛けて復興特別所得税を求める仕組みです。

    <住民税>

    不動産を売って利益が出た場合、住民税も発生します。住民税は、所得税とは別に地方税として課税されるもので、譲渡所得を申告するとその情報が自動的に自治体に送られ、住民税が計算される仕組みです。

    税率は、不動産をどれくらいの期間所有していたかによって異なり、売却するまでの所有期間が5年未満だと「短期譲渡」として9%、5年以上だと「長期譲渡」として5%の税率が適用されます。利益が出た場合は、譲渡所得税とあわせて住民税も支払うことになるので、不動産売却の際は住民税のことも頭に入れておきましょう。

    譲渡所得税はどれくらいかかる?

    不動産を売った際に利益が出ると「譲渡所得税」がかかります。譲渡所得税とは、いったいどれぐらいかかるのでしょうか? ここでは、譲渡所得税の税率と計算方法を紹介します。

    譲渡所得税の税率

    不動産を売って利益が出ると、譲渡所得税がかかります。譲渡所得税の税率は不動産をどのくらいの期間所有していたかで変わり、所有期間が5年以下なら「短期譲渡(39.63%)」、5年を超えると「長期譲渡(20.315%)」となり、5年を超えると以下の表のように税率が下がるのが特徴です。

    この差は大きく、短期間で売るとかなりの税負担が発生します。売却時点の年明けの1月1日を基準に計算されるので、売るタイミングもよく考えて計画しましょう。

    税の種類短期譲渡所得(5年以下)長期譲渡所得(5年超)
    所得税30%15%
    復興特別所得税0.63%0.315%
    住民税9%5%
    合計税率39.63%20.315%

    譲渡所得税の計算方法

    ①譲渡所得を把握する

    譲渡所得は、不動産を売って得た金額から、購入時や売却時にかかった費用を引いた金額のことです。計算式は「譲渡所得=売却価格−取得費−譲渡費用」で、例えば、5000万円で買った物件を8000万円で売った場合、利益は3000万円であり、この3000万円が譲渡所得となります。

    取得費とは、不動産を買ったときの価格に登記や手数料などを加えた額であり、譲渡費用は売却時にかかった仲介手数料や印紙税などの経費です。

    なお、物件が相続されたものであったり、購入時期が古くて取得費を調べるのが難しい場合は、概算取得費を適用することができます。

    ②特別控除額を差し引く

    譲渡所得を求めた後は、特別控除額を差し引いて課税対象となる金額を算出します。特に「居住用財産の3,000万円特別控除」や「空き家の3,000万円特別控除」などの特例を適用できる場合は、譲渡所得から3,000万円を引くことが可能です。

    また、特別控除を適用して譲渡所得がマイナスになった場合は、課税譲渡所得はゼロになり、税金はかかりません。特例をうまく活用すれば、大きな節税ができることもあります。

    ③税率をかける

    譲渡所得から特別控除額を引いた後、その金額に税率をかけて税金を計算します。前述したように、税率は物件の所有期間によって異なり、所有期間が5年以下の場合は39.63%、5年を超えると20.315%です。

    さらに、10年以上所有している物件には「軽減税率の特例」が使えることがあります。この特例を利用すると、譲渡所得のうち6,000万円以下の部分には14.21%、6,000万円を超える部分には20.315%の税率が適用される仕組みです。

    譲渡所得税に対して利用できる特別控除

    譲渡所得税がかかるときでも、特別控除を使えば節税することが可能です。ここからは、どんな控除が利用できるのか、そしてどれくらい税金が減るのかを分かりやすく解説します。

    居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例

    居住用財産の譲渡を行った場合の3,000万円の特別控除の特例は、居住用財産の譲渡で得た利益に対して、3,000万円を控除できる特例です。マイホームを売却する場合に適用される特別控除で、譲渡所得から最大3,000万円が控除され、課税額が軽減されます。

    この控除を受けるためには、自ら住んでいた住宅であることや、売却後3年以内に売却手続きを終えることなど、条件をクリアしなければなりません。ほかにも、親族間での売買には適用されず、一定期間内の再利用も制限されるなど、細かい条件がたくさんあります。

    所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例

    所有期間が10年を超える居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例は、マイホームを10年以上所有している場合、売却時に条件を満たせば税金が軽減される特例です。通常、長期譲渡所得にかかる税率は約20%ですが、特例を使えば、6,000万円以下の部分の税率を14.21%に下げられます。また、6,000万円を超える部分は通常の20.315%の税率が適用される仕組みです。「3,000万円の特別控除」とも併用でき、まず控除を受けた後に軽減税率を適用するケースが多くあります。

    被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例

    相続した空き家を売却する際、一定の条件を満たせば「3,000万円の特別控除」が適用されます。被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例の対象となるのは、昭和56年5月31日以前に建てられた「旧耐震基準」の家屋で、特別控除が適用される売却期限は2027年12月31日までです。

    適用条件として、売却前に相続人が家屋を耐震基準に適合させるか、もしくは取り壊して土地のみを売却することなどが求められます。この特例を活用することで、税負担を大幅に軽減できる可能性があるため確認しましょう。

    譲渡損失となった場合の特例

    不動産を売って損が出た場合、「損益通算」や「繰越控除」といった特例を使えます。「損益通算」は、その年のほかの収入と損失を相殺できる制度で、税金の負担を減らせるのがポイントです。

    また、マイホームなど一定の条件を満たしていれば、損失を翌年以降の3年間繰り越せる「繰越控除」も使えます。この特例により、住宅ローンが残っている家を売ったときに損失が出ても、ほかの収入と相殺でき、税負担を大幅に減らすことが可能です。

    居住用財産の買換え特例

    居住用財産を売却して新しい住まいを購入する際に適用することで、売却時に発生する税金を繰り延べる制度です。具体的には、売却した家の価格よりも新しく購入した家の価格が高い場合、その時点での譲渡所得には税金がかからず、将来その新しい家を売却するまで課税が延期されます。

    購入価格が売却価格より低い場合は、差額部分に対して税金を払うことが必要です。この特例を受けるには、売却した住宅が10年以上居住していたものであるなど、いくつかの要件があります。

    不動産売却に関する注意点

    不動産を売却する際の税金や手続きには、注意が必要なこともあります。知らないと損するポイントもあるので、注意すべき点を確認しておきましょう。

    控除は併用できないものがある

    不動産を売却する際、いくつかの控除が受けられますが、併用できないものもあります。例えば、マイホームを売ったときの「3,000万円の特別控除」と「住宅ローン控除」は同時に使えません。住宅ローン控除は、ローン残高の最高で0.7 1%が所得税から控除される仕組みで、年間最大35 40万円、13 0年間受けられる制度です。

    このように、併用できない場合は、どちらが得なのかしっかり確認することが大切です。どの控除が自分にとってベストか、状況に応じて慎重に検討しましょう。

    譲渡損失がある場合も確定申告をする

    不動産を売却して損失が出た場合でも、確定申告を忘れずに行うことが大切です。特に「譲渡損失の損益通算」を希望する場合は、必ず申告しなければなりません。損益通算とは、ほかの所得と売却損を相殺し、結果として課税対象の所得を減らして税金を軽減できる仕組みです。

    普段は確定申告が不要でも、不動産売却で損失が出た場合は、損益通算を利用して税負担を減らせるチャンスがありますので、忘れずに確定申告を行いましょう。

    住民税と所得税の支払いのタイミング

    所得税と住民税は、支払うタイミングが異なるため注意が必要です。所得税は不動産を売却した年の翌年3月15日までに確定申告をして支払いますが、住民税はその約3カ月後、6月から支払いが始まります。

    また、所得税は振替納税という方法を選ぶと、4月20日ごろに銀行口座から自動引き落としされるため、少し支払いを先延ばしすることも可能です。計画的に納税を行えるように、この方法も考えてみるのもよいでしょう。

    まとめ

    不動産を売却して利益が出ると税金がかかりますが、控除をうまく使えばかなり節税できます。例えば「3,000万円の特別控除」などを活用すれば、税金をぐっと減らせます。

    どの控除が使えるかは事前に確認しておくことが大切です。不動産売却で損をしないように、しっかりと準備を進めましょう。

    この記事を書いた人

    スムストック編集部
    スムストック編集部
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