※2025年10月1日現在の法律に準じた内容です。
「引っ越しをしないまま、今の家を売ることはできるのか」と不安に思う方は少なくありません。実際には、住みながら売却活動を進めている方は多く、正しい準備と対応をすれば問題なく進められます。
本記事では、住みながら家を売る具体的な方法や注意点、内見を成功させるための工夫を分かりやすく解説します。
住みながら自宅を売却することは珍しくなく、多くの方が選択している現実的な売却方法です。ライフスタイルや資金状況に合わせて、家の売却は柔軟に考えられます。
家の住み替えには「売り先行」「買い先行」「同時進行」の3つのパターンがあります。それぞれにメリット・デメリットがあるため、自身のライフスタイルや資金計画に合わせて選ぶことが大切です。
3つの方法は、売却と購入のタイミングによって分類され、経済状況や家族の事情を考慮して決めます。
家の住み替えについては、こちらの記事でも詳しく解説していますので、ご参照ください。
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「売り先行」とは、現在の住まいを売却してから新居を購入する方法です。住みながら売却を進める場合は、この「売り先行」にあたります。多くの方が選んでいる方法で、売却資金を住宅ローンの返済や新居購入の頭金に充てられる点がメリットです。
一方で、内覧対応の準備やスケジュール調整が必要になるほか、新居が決まるまでの間に仮住まいへの引っ越しが必要となるケースもあります
「買い先行」は、新居を先に購入してから現在の住まいを売却する方法です。新居探しをじっくり行える安心感がある一方で、売却が思うように進まないと二重の住宅ローンを抱えるリスクがあります。資金力に余裕がある場合には有効な選択肢です。
「同時進行」は、現在の住まいの売却と新居の購入を同時に進める方法です。住み替えとしては理想形ではありますが、売却と購入のスケジュールを完全に一致させるのは非常に難しく、現実的には「売り先行」か「買い先行」になるケースが多くなります。
実際、売却活動と日常生活を両立している方は少なくありません。住みながら売却する方法は一般的な選択肢であり、工夫や準備をしながら無理なく売却を成功させているケースが多くあります。

住みながら売却することには、経済的にも心理的にも大きな利点があります。資金面での安心と精神的な余裕を両立できる点が、多くの方がこの方法を選ぶ理由です。
新居を先に購入してから売却を始める「買い先行」では、売却が予定どおりに進まないと二重ローンを抱えるリスクがあります。旧宅のローンと新居のローンが重なると、家計への負担は非常に大きくなります。
一方、住みながら売却を進めれば、今の住宅ローンを支払いながら売却活動を行えるため、余計な住居費が発生しません。買主が決まれば、その売却資金をローン残債の一括返済や新居購入の頭金に充てられるため、スムーズな資金計画が可能です。経済的なリスクを最小限に抑えられる点は、大きなメリットといえるでしょう。
新居を先に購入してしまうと、「早く売らなければ二重ローンを解消できない」と焦りが生じがちです。その結果、相場よりも安い価格で売り急いでしまうケースも少なくありません。
その点、住みながら売却する場合は、時間に余裕を持って活動できます。内見のスケジュール調整や価格交渉も冷静に行えるため、結果的に納得度の高い取引につながります。精神的な余裕があることで、不動産仲介会社とのコミュニケーションも円滑になり、売却成功の確率が高まるのです。
家具や家電が配置され、生活感のある状態の家は、空き家よりも買主が生活をイメージしやすいという利点があります。ファミリー層にとっては、収納の使い方や部屋のレイアウトが参考になり、「この家なら自分たちも快適に暮らせそう」と感じてもらいやすいのです。
庭やベランダの使い方、日当たりのよさ、風通しのよさなど、実際に生活しているからこそ伝えられる魅力もあります。売却活動において「暮らしのリアリティ」を示せるのは、住みながら売却する大きな強みです。
一方で、生活と売却を両立させるからこその課題もあります。準備や心構えを怠ると、売却活動がスムーズに進まない原因となるため注意が必要です。
住みながら売却を行うと、内見のスケジュールに合わせて生活空間を整える必要があります。いつ内見の予約が入っても対応できるように、掃除や片付け、におい対策などを日常的に行わなければならず、家族にとって大きな負担となるでしょう。
小さなお子様やペットがいる家庭では、内見直前に急いで片付けたり外出の準備をしたりと、思った以上に労力がかかります。ストレスを軽減するためには、なるべく普段から物を減らし、掃除しやすい環境を整えておく工夫が欠かせません。
住みながら売却する際に注意すべきなのが「生活感のコントロール」です。洗濯物や日用品が雑然と置かれていると、内見者に「狭い」「所帯じみている」「片付けにくそう」といったマイナスの印象を与えてしまう可能性があります。
玄関やリビングルーム、水回りは、第一印象を左右する重要な場所です。普段の生活では気にならない程度でも、内見者の目には大きな欠点として映る場合があります。常に清潔感を保ち、余分な生活感をできるだけ排除する工夫が必要です。
売却先が決まったとしても、新居が決まっていない場合は一時的に仮住まいを利用せざるを得ないケースがあります。その際には敷金・礼金や引っ越し費用、家賃などの余計な出費が発生します。
仮住まいから購入した新居への再引っ越しも必要になるため、時間的・体力的な負担も増加します。

住みながら売却する際に、もっとも重要なのが内見対応といってよいでしょう。内見は、買主にとって物件を直接体感できる貴重な機会であり、ここでの印象が購入意欲を大きく左右します。
どんなに立地や価格がよくても、内見でマイナスの印象を与えてしまえば成約は遠のいてしまいます。第一印象をよくし、買主に「ここに住みたい」と感じてもらう工夫を取り入れることが成功のカギです。
内見で好印象を与えるためには、できる限り生活感を抑えることが大切です。モデルルームのような整った空間にできれば、買主は家そのものの魅力に集中できます。
まずは不要な荷物を整理し、しばらく使わない物はトランクルームや実家などに一時的に預ける方法もあります。部屋に物が多いとどうしても狭く見えてしまうため、思い切って減らす決断をしましょう。
玄関とリビングは、重点的に整えておく必要があります。玄関は入った瞬間の第一印象を決め、リビングは家全体の雰囲気を左右します。この2つがすっきりしているだけで「整った家」という印象を与えられます。
収納も無理に詰め込みすぎず、ある程度の余裕を残せば「この家は収納力がある」と買主に思わせる効果があります。観葉植物や照明の工夫をすれば、過度な生活感を出さずに心地よい暮らしをイメージさせられるでしょう。
清掃と同じくらい重要なのがにおい対策です。においは目に見えないものですが、来訪者の記憶に強く残るため注意が必要です。タバコやペットのにおいが要注意なのは当然ですが、住んでいる本人にとっては、慣れてしまって気づきにくいにおいもあります。
普段から朝と夜に換気を行い、空気のこもりを防ぐようにしましょう。冬や雨の日は換気を怠りがちですが、空気が入れ替わっていない家はそれだけで印象が悪くなります。
カーテンやラグなどの布製品はにおいを吸いやすいため、定期的に洗濯すると効果的です。必要に応じてプロにハウスクリーニングを依頼するのも有効です。
また、水回りはにおいが発生しやすい場所です。排水溝のぬめりや換気扇の油汚れから独特のにおいが広がることもあるため、こまめな掃除が欠かせません。清潔で爽やかな空気が流れている家は、それだけで「住みやすそう」という好印象を与えられます。
内見当日は「買主にとって心地よい時間を提供する」ことを最優先に考えましょう。家族全員がそろっていたり、ペットが走り回っていたりすると、買主が落ち着いて見学できない可能性があります。可能であれば家族の人数を最小限にし、ペットも外出させると安心です。
部屋はすべての照明を点灯させ、カーテンを開けて明るい雰囲気を演出します。光に満ちた部屋は広く見えるだけでなく、家全体の印象を大きく向上させます。
買主から生活に関する質問を受けた場合は、誠実に答えることが大切です。ネガティブな事実も隠そうとはせず、工夫を添えた説明をするようにします。例えば、午後に日当たりが悪い印象の部屋でも、「午前中は東側の窓から日光が入ります」とリアルな生活イメージを伝えると信頼感につながります。
なお、価格や条件といった契約に関わる部分は不動産仲介会社の担当者に任せ、売主は暮らしのリアルさを伝える役割に徹するとスムーズです。

自宅の売却を成功させるためには、以下の3つのポイントを押さえておきましょう。
売却活動の第一歩となるのが査定です。査定価格は不動産仲介会社によって数百万円単位で差が出ることもあり、1社だけの数字をうのみにするのは危険です。
自宅を建てたハウスメーカーであれば、構造や設備の特性を踏まえた評価をしてもらえる可能性がありますので、最初に相談するとよいでしょう。その上で、複数の不動産仲介会社に査定を依頼し、相場感を把握するようにします。
査定価格だけで判断するのではなく、不動産仲介会社の信用や担当者の人柄も重視しましょう。内見や生活の調整に柔軟に対応してくれる担当者であれば、売却活動をストレスなく進められます。
売却が決まってから新居を探し始めると、時間に追われて妥協せざるを得なくなることがあります。スムーズに住み替えを行うためには、売却活動と並行して新居探しを進めるのが賢明です。
理想とする条件をあらかじめリスト化しておけば、物件を比較検討する際に迷いが少なくなります。売却が思ったより早く進むケースもあるため、常に物件情報をチェックしておくと安心です。
住みながらの売却は生活との両立がカギとなるため、不動産仲介会社との連携が欠かせません。内見のスケジュールをどう組むか、家族の予定にどう影響が出るかなど、細かい点も相談しておくと、本人と家族の負担を減らせます。
販売戦略や価格の設定、値下げのタイミングといった重要な決定は、経験豊富な担当者と二人三脚で進めたほうが安心です。プロに相談しながら進めることが、結果として早期かつ納得度の高い売却につながります。
住みながら家を売ることは十分に可能であり、多くのメリットがあります。ただし、内見対応や生活感のコントロールなど、注意すべき点も少なくありません。計画的に準備し、信頼できる不動産会社と協力することで、スムーズで納得のいく売却を実現できます。
売却前にはご自宅が「スムストック」に該当するかどうかを確認しておくことも大切です。スムストックとは、大手ハウスメーカー10社が建てた住宅で、共通の基準を満たしていると認定される優良な住宅です。
スムストックの住宅は、資産価値を高く評価してもらえる可能性があります。売却の第一歩として、ぜひ確認してみてください。